TOP ローカル 奈良 〈奈良市/木津川市〉稼働わずか9年の“幻の鉄道” 開業125年『大仏鉄道』の轍を歩く

〈奈良市/木津川市〉稼働わずか9年の“幻の鉄道” 開業125年『大仏鉄道』の轍を歩く

幻の鉄道『大仏鉄道』とは

「大仏鉄道」こと関西鉄道大仏線は、1898年4月19日に開通した、加茂駅~大仏駅間の約10㎞を走った鉄道路線。開業当時は同社の花形路線として東大寺への参詣客で賑わいました。

翌年には奈良駅まで延伸しましたが1907年に平坦な木津駅ルート(現在のJR関西本線)が開通すると、大仏線は急坂などの難所を抱えることから同年に廃線。

わずか9年と短い稼働期間だったため、当時の資料もほとんど残っておらず、このことから現在では“幻の鉄道”と呼ばれるようになりました。

大仏線では真紅色の塗装を施した輸入機関車が運行しており、雷(いかづち)、雷光(いなづま)、鬼鹿毛(おにかげ)などの愛称がつけられていました。

「雷光号」のイラスト/堀田憲司氏

旅はJR加茂駅からスタート

幻の鉄道といわれる大仏鉄道ですが、加茂駅~奈良駅間の路線跡には現在も遺構が数多く残されています。JR加茂駅には4番のりばのホームに当時の赤レンガ積みが残っています。

駅西側の線路沿いには加茂駅開業当時から建つ赤レンガの「ランプ小屋」があり(内部非公開)、駅東公園には機関庫転車台レール跡遺構と動輪のオブジェが展示されています。

大仏鉄道と関係はありませんが、加茂駅から線路沿いを木津駅方面へ7分ほど歩いたところには「貴婦人」の愛称でも知られる国鉄C57形56号蒸気機関車が展示されているのでこちらもあわせて見学してみてください♪

石とレンガ積みが美しい隧道&橋台

路線跡に残る遺構の多くは橋台や隧道。石やレンガを積み上げた美しい姿に、苔が生し草木が生い茂るさまは長い歴史を感じます。

加茂駅から徒歩約40分の場所にある「観音寺橋台」は石積みの橋台。現行の関西本線と並行して建設されており、同線を走る電車を入れた写真が撮れるスポットとして人気です。

観音寺橋台と同じく石積みの「鹿背山橋台」は堅固な構えの橋台。遺構のなかでもとりわけ人気のスポットで、辺りの里山風景も美しい!

「梶ヶ谷隧道」は下部が石積み、アーチ部分がレンガ積みの隧道。内部をくぐることができ、イギリス積みのレンガアーチを間近に体感できます。

上部が生活道路として現在も活躍中の「赤橋」。イギリス積みのレンガに隅石は花崗岩の算木組という堅牢な造りが特徴です。

「松谷川隧道」は内部通行ができないレンガ造の隧道ですが、色の違うレンガを交互に配置した美しい造形が魅力です。

道路の脇にひっそりと佇む「鹿川隧道」。農業用水路を通す目的で造られた石積みの隧道で、赤橋同様、こちらも現役で利用されています。

大仏線屈指の急坂の難所「黒髪山」には同線唯一のトンネル「黒髪山トンネル」がありました。1966年頃まで残っていましたが道路拡張のために取り壊され、現在は切通しとなっています。

1965年頃の黒髪山トンネル/撮影:高山禮蔵、提供:大仏鉄道研究会

かつての終着駅は今

現在大仏駅の跡地には「大仏鉄道記念公園」があり、中央には動輪のモニュメントが置かれています。春になればしだれ桜の濃いピンクが青空に映えて、お花見散策スポットとしても人気です。

大仏線開業の翌年には現在の奈良駅まで延伸され、記念公園の南を流れる佐保川には橋が架けられていました。今でも下長慶橋からレンガ製橋脚の基底部を見ることができます。

下長慶橋を渡った先にはかつての国鉄奈良駅(現・JR奈良駅)・近鉄油阪駅(1969年廃止)の駅前通りとして栄えた船橋商店街もあります。レトロな雰囲気そのままに新旧様々なお店が連なっているので、ぜひこちらも散策してみて。

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