地下に眠る巨大トンネルの謎!映画のロケ地にもなった幻の「産業遺産」を探索してきた。「ハガレン」や「デスノート」など
ポートアイランド・六甲アイランドの、埋め立て用土砂の運搬に使われた須磨ベルトコンベヤ跡トンネルを探索してきました。
通常、一般公開されていませんが、産業遺産(ある時代においてその地域に根付いていた産業の姿を伝える遺物、遺構、遺跡)としての活用を検討するモニターツアーに参加した形です。
入口も公開されておらず、秘密の場所ということで、特別感を味わいながらしっかりレポートしていきます!
もくじ
● 須磨ベルトコンベヤの歴史
● いざ!須磨ベルトコンベヤ跡トンネルへ潜入
● 映画のロケ地にも!?まるでアート作品
● 須磨ベルトコンベヤ跡トンネル(端部)へ!
神戸市須磨区と西区を縦断し、1964年から41年間にわたって神戸の都市開発を支えてきた総延長約14.5kmに及ぶ須磨ベルトコンベヤ。
1981年代に入り、都会の人口増加に伴い、産業が発展。神戸市では、海に面する産業用地の造成が進められ、須磨ベルトコンベヤは神戸の発展に大きく貢献しました。
須磨ベルトコンベヤで運ばれた土砂は、神戸空港やポートアイランドなどの埋め立てにも使用されました。
ピーク時には1日12時間稼働し続け、神戸空港の完成に合わせて、2005年9月にその役目を終えています。それまでの約41年間で運搬した土は5億7千万トンにおよんだそうです。。
神戸市は、六甲山系が海にせまり平地が少ない地形ですが、経済の発展と人口の増加に対応するために用地の確保に乗り出したんだとか。
そこで考え出されたのが、「高倉山」などの山を削り平地を作り、その土で海を埋め立てるという方法。
この方法は「山、海へ行く」と言うキャッチコピーのもと、大規模に行われました。
神戸市須磨区一ノ谷町5-1-1
現在は安全のため、須磨ベルトコンベヤ跡トンネルへの入り口は公開されていませんが、Google mapで検索するとこのように出てきます。
ベルトコンベヤの終着地点がったのはここら辺で、神戸大学名谷キャンパスの地下にもトンネルが一部通っているそう。
うちのキャンパスには、地下道があります。昭和30年代の神戸港の埋め立て計画で活躍した須磨ベルトコンベヤ(土砂運搬施設)の遺構です。たしかに、きのこ栽培ができる(やらない)。 pic.twitter.com/bYJAx6XUIR
— 神戸大学大学院 保健学研究科 寄生虫学 (@kobe_para) May 24, 2017
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三宮からバスに揺られること数十分。須磨ベルトコンベヤ跡トンネル(太山寺側)へ到着します。
太山寺側の入口から地下トンネルに足を踏み入れると、薄暗いトンネル内にはいくつかの小さな明かりが灯っているのみで、奥はどうなっているのかよく見えません。
ガイドさんが持っているライトの光を頼りに、足元もはっきり見えない中、暗い通路をずんずん進んでいきます。
地下トンネル内は年間を通じて10度前後だそうで、ひんやりとしていて肌寒いです。この日の神戸の最高気温は21度、最低気温は13度なので、外気温との差を感じます。
奥の方へ進んで行くと、突如視界が開け、天井が高く大きながらんとした空間が広がります。
須磨ベルトコンベヤ跡トンネル(太山寺側)内には、一部を残してベルトコンベヤは全て撤去されています。無機質なコンクリートに囲まれ、コンサートホールのような巨大な空間に、思わず息をのみます。
錆びた自転車が端にポツン。今は使われていませんが、トンネル内は広いため、以前はこの自転車がトンネル内の移動に使われていたそう。
細い道を少し進んでいくと、永遠に続くような深い道のあるエリアに到着!足元にはライトが均等に並べられており、まるでインスタレーション(場所や空間全体を作品として体験させる芸術)のようです。
ベルトコンベヤの大半は撤去されましたが、残ったトンネルはこれまでも産業遺産として一部利活用されました。事業後期の1986~1989年に延伸された約7キロメートルのトンネルは2005年の停止後も残され、今も神戸市が管理しているとのこと。
トンネルの埋め戻しに多額の費用をかけるよりも、利活用の道を探ることにしたんだそう。
2007年からは民間利用も実施。温度や湿度が一定に保てるトンネル内部の特長を生かし、一時は神戸ワインの貯蔵庫になったり、緑化パネルに用いるコケの栽培地になったりしました。
また、地下トンネルは地震や災害の影響を受けにくいことから、宇宙科学の実験施設などにも活用されているとのこと。今後のさらなる活用が期待されます。
来た道を戻りそのまま進んで行くと、ベルトコンベヤを支えていたコンクリートの柱が立つ、広々とした空間に到着。
ここは稼働時、ベルトからベルトへ土が乗り替わる地点だったそうです。
また近年、映画の制作会社の目に留まり、ロケ地としても注目を集めているんだとか。
トンネル内の天井が高くコンクリートに覆われた独特な雰囲気や空気感に、映画に使いたくなるのも納得です。トンネル内の温度は一定で、夏場は蒸気が発生することもあるそう。
最近では某有名アニメ監督も視察に訪れたんだとか。今後アニメの一場面に使われる可能性もあるかも?!
下記は、実際にロケ地として使用された映画です。
・2015年 「土曜ワイド劇場特別企画 スペシャリスト4」
・2016年 「デスノート ライトアップ・ザ・ニューワールド」「ミュージアム」
・2017年 「鋼の錬金術師」
太山寺側のツアーを終え、出入り口から一旦外に出ます。明るい地上の光を見ると少しだけほっ。
太山寺側を見学した後はバスで移動し、ベルトコンベヤの一部が残っているという須磨ベルトコンベヤ跡トンネル(端部)の方へ向かいます。
須磨ベルトコンベヤ跡トンネル(端部)に到着し早速階段をおりていくと、土埃のような匂いが。薄暗いトンネル内には、黄色いベルトコンベヤだけが黄色く、くっきりと浮かび上がります。
トンネル内にはベルトコンベヤの設備がぎっしりと設置されており、太山寺側とはまた違う印象です。端部では、ベルトコンベヤの一部などの設備が保存されている場所もあり、稼働していた当時の雰囲気がより一層感じられます。
ベルトコンベヤ自体は、錆びも少なくきれいな状態に見えます。ローラーに巻き付いた太いベルトが、今にも「ゴゴゴー!」と地響きを立てて動き出しそうです。ここは、機械室だったんだそう。
ベルトがかけられていたので近くで見てみると、手でも挟めるほど薄く、この厚みで何トンもの土を運んでいたと考えると驚きです。
余談ですが、トンネル内でこうもりが2匹寄り添って眠っていました。熟睡中だったのか、人間が近くにいても逃げる様子はありません。
他にこうもりの姿はなく、どこか出入りできる場所でもあるんでしょうか。
神戸市須磨区と西区を縦断し、2005年9月12日までの約41年間、陰の立役者として運搬した土は5億7千万トン。
今日も須磨からベルトコンベヤで運ばれてきた土の上を、人々は暮らしを送り、飛行機が発着します。
現在は産業遺産となった須磨ベルトコンベヤが、今の神戸の暮らしを作っているんだと改めて感じることができました。