TOP ローカル 京都 西舞鶴の漁師町に佇む総二階の木造レトロ銭湯「日の出湯」へ

西舞鶴の漁師町に佇む総二階の木造レトロ銭湯「日の出湯」へ

2019.02.12

西舞鶴駅から自転車で15分。「舞鶴のベニス」とも称される古い漁師町・吉原地区にレトロな木造の銭湯がありました。五老ケ岳の伏流水を汲み上げたお湯は肌当たり最高ですよ。

 

ここは西舞鶴のベニス? 

f:id:kyotoside_writer:20190207124324j:plain西舞鶴駅から自転車で15分。伊佐津川を渡ると雰囲気のよい街並みが現れます。ここが西舞鶴の漁師町・吉原地区。南北に直線の道路が数本走り、中央を水戸堀が流れ、両脇に舟屋が立ち並ぶ景色は風情たっぷりです。

 

f:id:kyotoside_writer:20190207124358j:plainここ、吉原地区ができたのは今から300年前。それまで、ここの人々は伊佐津川の西側で漁業を営んでいましたが、享保12(1727)年、田辺城下で大火が起こった際、藩の命令で現在の地に移住させられました。町割りはその当時のまま。今も細い通りを歩けば江戸時代の気配が感じられます。

 

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紅白の暖簾がなんとも良い感じ

吉原地区は西吉原と東吉原に別れていて、その真ん中に立つのが本日の目的である「日の出湯」です。

 

f:id:kyotoside_writer:20190207124421j:plain創業は明治の終わり頃とのことですが、「詳しい年代は分からないんです。今でも町の人達は、“日の出湯に行く”とは言わずに“吉田屋へ行く”っていうんですよ。というのは元々、吉田さんという方が営んでおられたからなんです」とおっしゃるのは、3代目の息子さんである高橋一郎さん(70歳。ちなみに3代目は現役バリバリの女将さん)。それを大正時代に高橋さんのお祖父さんが受け継いだのだとか。

 

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内部は所々、修理していますが建物は基本的に当時のまま。左のこの格子は外せるそうですよ

ところで、この吉原地区は海がすぐ横にあるのに3mも掘れば良質な地下水が出る地。「かつて、うちの東側と西側に共同の水組み場があったそうで、恐らくそれでこの場所で銭湯をするようになったのではないかなと思います。というのも日の出湯は、元々は町で作った共同銭湯なんですよ」。温泉の共同浴場は聞いたことがありますが、町の共同銭湯というのは初めて聞きました!

 

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いざ、入ってみましょう。入口には年期の入った扇形の看板が。確か関西は右が女湯で左が男湯だったような気がしたのですが(関東は逆)、こちらは右が男湯で左が男湯なんですね~。

自然光が入り、タイルがカワイイ銭湯

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入ると、まず脱衣所があって奥に洗い場と続いています。65年前と40年前に内部を改装した時に、洗い場まで2段のタイルの階段を付けたのだそうです。

 

f:id:kyotoside_writer:20190207124826j:plain引戸の上の方は65年前に入れたタイルが。

 

f:id:kyotoside_writer:20190207125009j:plain造られた当時は床も湯船も石だったのだとか。「道後温泉みたいな感じだったそうですよ」と高橋さん。さらに壁はタイルではなく腰板が回されていたそうです。それもオシャレだなあ。

 

 f:id:kyotoside_writer:20190207125020j:plainピンク色に塗られた木の天井から柔らかな陽が入ってきます。

 

f:id:kyotoside_writer:20190207125038j:plainお湯は今も創業時と変わらず、ほぼ100%井戸水。「この水は、すぐ裏にある五老ケ岳の伏流水なんです」。五老ケ岳といえば、昨年夏にパンケーキとクリームソーダを食べに行った五郎スカイタワーのあるところ! なるほど、あの山の伏流水なんですね。そっと手を入れてみたら、とても柔らかな当たり。高橋さんは、お湯を沸かす前に必ず一度、汲んだ水を一杯飲み、今日もいい水かチェックしるんですって。

 

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手前が女湯の脱衣場、奥が男湯

こちらは女湯の脱衣場。男湯とほぼ同じ造りですがベビーベットがあったり、少し脱衣所が少し広い気がします。

 

f:id:kyotoside_writer:20190207125138j:plain(左上)レトロな扇風機(右上)黒電話も現役で活躍中。電話が鳴るとジリリリーンという音が鳴ります(左下)女湯にあったかわいいベビーベット(下中)入口上の長押(なげし)は立派な一枚板

2階はかつて町の人の交流の場だったのか??それとも

f:id:kyotoside_writer:20190207125255j:plain「この建物は2階に20畳の座敷があるんです」と高橋さん。それはぜひ! ということで早速、2階を見せていただきました。1階の先頭部分は手を入れていますが、ここは建築当時のまま。床の間に付書院、違い棚、欄間まである立派なお座敷。そして日当たりがいい~!

 

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「ここが不思議なのは、かつて女風呂の脱衣場の階段が付いていて、女湯の方からしか上がられなかったんです」と高橋さん。そういえば、昔はお湯に入った後、男湯の2階には一息つく場所を持つ銭湯もあったと言う話を聞いたことがあるので、もしかしたら男女逆だった時代があったのかしら?? (階段がある分、女湯の脱衣場の方が少し広かったんですね)

 

f:id:kyotoside_writer:20190207125354j:plain2階からの見る吉原の家並も風情があります。お風呂上り、ここに縁に座って夕風に当たりながら通りを眺めながら、ラムネなんか飲んだら最高だろうな~。

お風呂のお湯は100%天然水

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浴場のすぐ裏は釜場になっています。お祖父さんの代はコークス(石炭の炭素部分だけを残した燃料)で沸かしていたそうなのですが、先日、それをおがくず(木屑)に代えたいという届出書類が見つかったのだとか。

 

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浴場と釜場の間には立派な石が

「燃料はおがくずですが、炊き付けはかまぼこ板の端切れなんかを使っていました」。なるほど、舞鶴といえば、かまぼこですからね。高橋さんに伺うと吉原には、かつては27軒もかまぼこの工場があったのだとか。

 

f:id:kyotoside_writer:20190207125611j:plain町の人だけでなく、全国の銭湯ファンからも愛されている日の出湯。ですが、お祖父さんの代の頃、一時、近所に、おしゃれなタイルの銭湯が出き、日の出湯は古めかしいと客が減ったことがあったのだとか。閉店も余儀なくされたそうですが、苦しい時代をふんばって耐え抜き今の時代に残してくださいました。

街歩きと共に、お風呂を楽しむのもいいですし、前回訪れた若の湯は、駅と日の出湯の間にあるので、はしご銭湯をするのも楽しそうですね~。(自転車は西舞鶴駅にある「まいづる観光ステーション」さんでお借りしました)

 

日の出湯
京都府舞鶴市字東吉原297
℡ 0773-75-0366
休 土曜日
営 16:30~20:30

 

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