長岡天満宮の見るべきポイントを歴史的観点から徹底解剖!
2022年、あけましておめでとうございます!
初詣や合格祈願などで神社へ足を運ぶ機会が増えるこの時期、みなさんにご紹介したいのが京都府長岡京市に鎮座する古社、長岡天満宮です。天満宮といえば、“北野の天神さん”こと北野天満宮が最も有名ですが、こちらも負けず劣らず、たくさんのディープな歴史と見どころを秘めているんですよ。お参りはもちろん、散策にも打ってつけの学びと癒しのスポットへご案内します!
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長岡天満宮ってどんなところ?
菅原道真公の思い出の地に鎮座
長岡天満宮があるのは、JR長岡京駅から西へまっすぐ延びる「天神通り(府道210号)」の突き当たり。石段の上にそびえ立つ大鳥居をくぐると、ハッとするほど美しい八条ヶ池の景色が目に飛び込んできます。この八条ヶ池を含めて、敷地面積はなんと約2万坪もあるという大スケールの神社なのです。
御祭神は、京都の北野天満宮をはじめ、全国の天満宮・天神社でお祀りされている菅原道真公。平安時代に学者・政治家として活躍した道真公は、歌人の在原業平らとしばしば長岡の地を訪れ、詩歌管弦を楽しんだそうです。
後年、太宰府に左遷された際もここへ立ち寄り、「我が魂長くここにとどまるべし」と名残惜しんだとも……。この時従者を務めた中小路宗則という人に木像を贈り、道真公の没後、御神体として祀ったのが長岡天満宮のはじまりと伝わります。
創建年は定かではないものの、応仁の乱の兵火を受けて社殿が消失し、明応7年(1498)に再建されたとの記録があることから、少なくとも500年以上の歳月を経ているのは明らかです。もっとも、長岡天満宮と呼ばれるようになったのは、江戸時代になってからで、それまでは旧地名の開田(かいでん)村に由来する「開田天満宮」の名で親しまれていました。
農村地帯だった開田村の人々は、天満宮を農耕の神様、村の守り神として崇めていたようです。道真公はもともと、恵みの雨をもたらす雷神と一体化して神(天神)となった経緯があるので、自然と隣り合わせで生きる人々にとっては非常に心強い存在だったことでしょう。
それが現在のように「学問の神様」としても慕われるようになったのは、江戸時代のこと。全国各地に読み書き算盤を教える寺子屋が普及し、そこに天神様が祀られたり、道真公の御神影が掲げられたりするようになり、道真公は「学問の神様」として崇敬されるようになったといわれています。
大改修に挑んだ江戸時代のキーパーソン
古くから皇族との縁が深く、たびたび寄進造営をうけていたと伝わる長岡天満宮。
寛永15年(1638)には、開田村一帯を領地としていた八条宮家の二代智忠(としただ)親王が天満宮の整備に乗り出し、社殿の東側に灌漑用水を兼ねた大池(現在の八条ヶ池)を築造、朝廷文化と西山の自然が織り成す優美な景観をつくり上げました。
智忠親王といえば、父・智仁(としひと)親王のあとを継いで、桂離宮(京都市西京区)の書院や茶屋、庭園などを造営したことでも知られるスーパー貴族。大プロジェクトを2つも成し遂げるほどの高い教養と美意識、そして何より熱いハートをお持ちの方だったんでしょうね。
長岡天満宮のココに注目!
平成生まれの大鳥居&江戸時代の石鳥居
境内はとにかく広い!ので、歴史を秘めた必見ポイントを予習しておきましょう!
まずは長岡天満宮の正面玄関にあたり、地域のランドマークにもなっている総御影石製の「正面大鳥居」。平成10年(1998)年に奉納されたもので、総高9.75m、総重量50tもあるそうですよ。平成30年(2018)の大阪北部地震のあとで補修された柱の土台部分には、道真公が愛した紅梅・白梅の彫刻が施されています。
正面大鳥居のような比較的新しい鳥居がある一方で、元禄5年(1692)に霊元上皇が奉納した石鳥居も現存しています。2基のうち1基は平成30年(2018)の台風被害で倒壊し、現在は記念モニュメントとして参道脇に。残る1基は今も現役で、境内北東の入り口(柳谷道沿い)に建っています。
桓武天皇の思し召し⁉︎平安神宮の旧本殿がココに
小高い丘の上に建ち並ぶ社殿も要チェック。朱塗の拝殿の後ろをのぞき込むと、昭和16年(1941)に平安神宮から拝領移築された本殿の姿を垣間見ることができます。
設計は、京都東山の祇園閣や東京の築地本願寺などを手がけた建築家・伊東忠太氏によるもので、三間社流造(さんげんしゃながれづくり)という、明治時代の神社建築の典型的なスタイルをとどめています。
貴重な平安神宮の旧本殿を譲り受けることができた背景には、平安神宮との“浅からぬご縁”があったといわれます。長岡の地は平安京と同じく、桓武天皇によって都(長岡京)が築かれた“聖地”であったことから、桓武天皇を祀る平安神宮からの拝領移築が実現したのです。
江戸時代から伝わる貴重な大絵馬も!
拝殿の左手に佇む「白梅殿(絵馬殿)」の中ものぞいてみましょう。
四方の壁に目をやると、巨大かつ古めかしい絵馬がずらり。これらは旧絵馬堂に残されていた28点の絵馬の一部で、ほとんどが江戸時代に奉納されたものだそう。
絵馬というと今は手のひらサイズが一般的ですが、昔はこのように大きく手の込んだ絵馬が祈願や成就のお礼として奉納されていたのです。
参拝リピート必至!四季の花咲く天満宮
豊かな自然に囲まれた長岡天満宮は、四季折々の美しい花に出合える癒しスポットでもあります。おもな花の種類と見頃をチェックして何度でもお出かけください!
2月下旬〜3月中旬 梅
梅は道真公がこよなく愛し、歌にも詠んだ天満宮のシンボルフラワー。境内全域に20種類、約300株の梅の花が咲き誇り、春の訪れを感じさせてくれます。
3月下旬〜4月上旬 桜
春になると、八条ヶ池の東堤に植えられたソメイヨシノが一斉に開花。池の周りの散策路「ふれあい回廊のみち」沿いに桜のトンネルが出現し、多くの花見客で賑わいます。
4月下旬 キリシマツツジ
長岡天満宮と聞いて、この花を思い浮かべる方も多いのでは? 長岡京市の天然記念物にも指定されている樹齢170年前後と推定されるキリシマツツジが、真紅の花を咲かせる様はまさに圧巻。平成時代に植えられたキリシマツツジも加わって、近年さらに迫力を増しています。
5月中旬〜下旬 アヤメ
5月中旬〜6月上旬 カキツバタ
6月上旬〜下旬 花ショウブ
八条ヶ池の中堤から水上橋を渡った先、中ノ島周辺にある「水生植物園」は、日本で古くから愛されるアヤメ科の花々の鑑賞ポイント。花びらの付け根に黄色と紫色の網目模様があるのがアヤメ、白い筋があるのがカキツバタというふうに、違いをじっくり見比べてみましょう。
7月中旬 ハス(紅蓮)
アヤメなどと同じく水生植物園で観ることができるハスは、友好都市の中国浙江省寧波市から贈られた「西湖紅蓮」という品種。直径20cm前後にもなる大輪の花は、豪華さと気品を兼ね備えた美しさ。花は早朝に開花し、午後には閉じてしまうので鑑賞はお早めに。
11月下旬 紅葉(カエデ、イチョウなど)
本殿への参道の途中にある紅葉庭園「錦景苑」は、その名の通り、錦繍の景色を満喫できる回遊式庭園。弁天池を取り囲む木々がまるで花のように鮮やかな色彩を放ち、観る角度によってさまざまな表情を見せてくれます。見頃の時期のライトアップもおすすめですよ♪
ほかにも、ツバキやサザンカなど、季節のうつろいを感じる花々を随所で見ることができるので、足元にも目を向けながら境内を散策してみてくださいね。
細川家×八条宮家のゆかしきエピソード
池のほとりに実在した「開田御茶屋」とは?
お花もいいけれど、歴史をもっと深掘りしたい!という方に注目していただきたいのがこちら、八条ヶ池を超えて、石畳の参道に差しかかった場所に建つ「古今伝授(こきんでんじゅ)の間ゆかりの地」石碑です。
古今伝授とは、古今和歌集の解釈を中心に、歌学や関連分野に関する秘伝の奥義を師匠から弟子へ伝承することを指します。
戦国時代の武将であり、一流の文化人でもあった細川幽斎(藤孝)も、かつて長岡の地にあった勝龍寺城で、公家の三条西実枝(さんじょうにしさねき)から古今伝授をうけています。その幽斎が古今伝授を行った相手が、八条宮家の初代・智仁親王。つまり、八条ヶ池の基礎をつくった智忠親王のお父上ですね。智忠親王は、父たちが古今伝授を行った御所近くの自邸の建物を、長岡天満宮の大改修に合わせて池のそばに移築したのです。
移築された建物は「開田御茶屋(かいでんおちゃや)」と呼ばれ、大切に伝えられてきましたが、明治維新後に解体され、ゆかりのある細川家のもとへ。その後、熊本市の水前寺成就園に移され、「古今伝授の間」として今日に伝わっています。
そして、幽斎と八条宮家を結ぶ開田御茶屋の歴史を伝えるため、平成24年(2012)に建てられたのが冒頭の石碑です。そこに刻まれた「温故知新」の揮毫は、細川家当主で元首相の細川護煕氏によるもので、長岡天満宮で温められたご縁が今も続いていることを実感できます。
天神さんの授与品&お立ち寄りスポット
勉強や仕事を頑張るすべての人に!
数々の見どころを堪能したあとは、長岡天満宮のご利益をお持ち帰りといきましょう! やはり、学業の神様・菅原道真公にちなんだお守りが充実しています。受験を目前に控えた学生さんに限らず、仕事や習い事の上達を目指している方にもおすすめですよ。
お正月期間中(1月中旬頃まで)は、「福桝飾り」(5000円)や「干支みくじ」(300円)といった寅年の縁起物もお目見えします。
参拝記念に御朱印はいかがでしょうか?天神様の使いとされる牛の朱印がキュートです♡ちなみに、社殿の周りには牛の像が合わせて4体あり、なかには愛らしい仔牛の像もあるので、よ〜く探してみてくださいね。
境内のおしゃれカフェでひと休み♪
ひと休みがてらお茶でもゆっくり……と思い立ったら、八条ヶ池と社殿の中間地点に佇むおしゃれなカフェ「omiya cafe」へどうぞ♪
結婚式や七五三、お宮参りなどの撮影を手がける「おみや写真館」のオーナー夫妻が、自家製のスイーツやこだわりのコーヒーを提供しています。
ただし、当面は週末(金、土、日曜)限定のテイクアウト営業となる見込み。テラス席または池のほとりのベンチに腰かけて、ほっと一息入れましょう。
■■INFORMATION■■
omiya cafe
所在地:長岡京市天神2-15-13(長岡天満宮境内)
電話:075-953-0922
時間:11:00〜17:00
※当面は、金・土・日曜のみのテイクアウト営業
https://www.instagram.com/omiyacafe_kyoto/?hl=ja
長岡天満宮
所在地:長岡京市天神2-15-13
電話:075-951-1025
時間:9:00〜17:00(社務所)
https://nagaokatenmangu.or.jp/