人気の醗酵調味料「塩麹」は、どんな料理も高級にする万能調味料だった
最近、テレビや雑誌、SNSで見かける身体に良い菌を取り入れて腸を元気にしよう! という腸活や菌活という言葉。そこで今、納豆菌から作られる納豆や麹菌から作る塩麹や味噌などが注目されています。でもこれらは今はやりのスーパーフードとは違い、昔から日本で食べられてきた発酵食品です。ですが納豆や味噌の食べ方は分かるけれど、イマイチわからないのが塩麹。そこで京都府向日市にある麹愛があふれすぎる「京都花糀(はなこうじ)」さんで塩糀のおいしい食べ方について伺ってきました。簡単なのでぜひ試してみてくださいね!
京都花糀って?
東向日駅の東口から歩いて2分。ここが「京都花糀」です。こちらは自ら醸した糀を使い、酵素ジュースや甘酒など糀を使ったドリンクや自家製の塩糀や味噌など様々な発酵調味料、糀を使ったスイーツを販売。さらに味噌仕込みや酵素ジュースのワークショップ、料理教室などを開いている麹のことなら何でも!というお店です。(京都花糀さんでは塩麹などを米糀で作っておられるので「糀」という字を使っています)
糀…明治時代にできた和製漢字。米から作る「米こうじ」のみを表す/麹…中国から伝わった漢字。現在は米・麦・豆などからつくられる「こうじ」全般を表す
営んでいるのは笑顔が素敵な野中恵美さん。お話を伺っていると麹愛がビンビン伝わってきて、野中さんがどうやって糀(麹)と出会ったか伺ってみたくなりました。京都府長岡京市で生まれの野中さん。20代の頃は栄養士として、結婚し子育てがひと段落した後はドラックストアで登録販売者(1期生)として働きはじめます。
ドラッグストアで働いていたある頃、お客さんの悩みが「頭が痛くて、ぼーっとして、胃も痛い……」などと複合的になってきたことに気づきました。話を聞いてみると、日本人の生活が24時間体制になったことで生活リズムがくずれ、しかもコンビニなどがあるので365日24時間、好きな時に好きなものを好きなだけ食べられる世の中になったことに要因があるのではないか、もしかしたらそれが体に負担をかけているのでは……と思ったそうです。
ですが、野中さんの仕事はあくまでも薬を売ること。お客さんに食事指導ができたら……とジレンマを抱えながら働いていた頃、甘酒ブームが到来します。野中さんのお店にも様々なメーカーの甘酒が入荷され、ある春の日に数種類の甘酒を購入。家に帰ってから成分表を見てみると、どの商品にも必ず「米麹」が入っていることに気が付き、ネットで検索してみて米麹が持つ力の素晴らしさに驚いたそうです。
「そうだ、 米麹を食生活に取り入れ、体に負担をかけている食生活をリセットをし、その上で何を食べても自分の中でデトックスできる体になればいいんだ! それには昔から日本人が食べてきたものを食べるのが一番」と考えた野中さん。それが叶えられるのが「米麹」だと気が付いたのです。
そこで発酵について学べて、しかも麹士の認定が受けられる教室が福岡県にあるのを見つけて即、電話。2カ月後に開催される教室を予約するのです。
その後、めでたく京都初となる上級麹士を取得。友人などに頼まれて味噌作りや塩糀の使い方教室を開いたりするうち、あちらこちらからワークショップ開催の声がかかるように。ここで栄養士、登録販売士を経て、麹について学んだことがここで一気に直結。そして秋には薬局を退社し、2018年8月に自身のお店をオープンさせたのです。米麹に出会ってからここまでの間、約1年2か月……。あまりのスピードと情熱に圧倒されます。
さて、そんな熱い麹愛を持つ野中さんに冒頭から疑問だった塩と糀を発酵させて作る「塩糀」って、こんな風に使える調味料なんだよということを教えてもらいました。
3個100円のお豆腐が高級豆腐店のあの味に
開口一番、「塩糀の便利さを知ってしまうとキッチンから調味料が減りますよ」と野中さん。
一体どういうことでしょう……ということで早速、塩糀を使うと味がどのように変化するかを体験することに。
豆腐、そしてプチトマト、そして塩糀レシピでよく登場する鶏むね肉を塩糀につけたものと、そうでないもの用意していただき、味を比較します。
まずは豆腐をそのままパクリ。これはいつもの味ですね。続いて塩糀を塗って2時間置いたものを食べてみると。なんとニガリの味が濃くなって上等な豆腐に大変身!!しかもスーパーで売っている3つで100円の豆腐と聞いて二度びっくり。
驚きながら続いてお隣のプチトマトを。塩糀で揉んだプチトマトはとがった酸味が減り、まろやかな味わいに。
最後に塩糀に2時間つけた鶏むね肉。これは歯ごたえが一変しました。ただ柔らかいのではなく弾力があってプルン、ツルンとした触感。噛めば噛むほど味が出る、そう、ずっと噛んでいたい味!
「そうでしょ、塩糀を使うと素材の味がより際立つんですよ。それに普通の食材がとてもおいしくなるから、とっても経済的な調味料なんですよ」。
なるほど! 塩糀は万能調味料だと思えばいいんですね。
※塩麴はメーカーによって塩分濃度や添加物が違うので塩糀を購入したら一度、味見をして量を加減してくださいね。
たったひと手間で卵焼きが高級ホテルの味に!!
「続いて卵焼きを作ってみますね」と野中さん。ボウルに卵を割って自家製の塩糀を3%加えておくこと5分。この間、塩糀の酵素の働きにより、たんぱく質が分解されていきます。焼きあがった卵焼きは白身がしっかりほぐれて黄身が濃く触感がプリンプリン。塩麹以外出汁や調味料は一切いれていないのにしっかりとした旨味があるのです。これは簡単だし、朝食やお弁当など便利に使えそう。
鶏むね肉はこうやって焼く
続いては塩糀を使ったことがある人の悩みナンバー1、鶏むね肉に塗ってやくとコゲるということ。表面だけが焦げて中は火が通らないという経験をした人も多いのでは。
「お肉なのでジューといわせたくなりますがコツは低温で焼くこと。時間がかかりますが、その間に違う料理を作ったり洗い物をしたり色々できますからね。焦げ色が欲しかったら、最後に温度を上げて焦げ目をつけてくださいね」。
これが塩糀を使ったワンプレート
そのほかにも塩糀を使った料理を作ってもらいました。
まずは塩糀を塗って焼いたカボチャ→ホクホクで蒸しカボチャのよう。
塩糀を揉みこんだキュウリと酵素ジュースを作った時に出たショウガの和え物→漬け時間が短時間とは思えないほどしっかりとした味。
大根は塩糀をまぶして少し置き、出てきた水分ごとゆっくりボイル。数滴、醤油をおとして煮含めかつおをまぶしました煮物→しっかり炊いた煮物の味。
サラダのドレッシングは酢、甘糀、塩糀、こめ油で作ったもの→とろみもありフレンチドレッシングのよう。
ニンジンとピーマンを千切りにして塩糀で和えて油で炒め、最後に醤油麹をかけたきんぴら→歯ごたえシャキシャキ。ニンジンやピーマンの野菜臭さが消えたので、野菜嫌いな人にもおすすめ。
ごはんは米麹をプラスした寝かせ玄米です。
塩糀を使った料理は簡単&便利なのに美味しさUP
さきほどのワンプレートからも分かるように塩麴には特別なレシピは必要なく、塗ったり、揉んで寝かせたりするだけととても簡単。しかも塩糀をプラスするひと手間だけで普通の野菜がこんなにもおいしくなるのなら、無農薬やこだわり野菜で作ったらどんなに美味しいのかしらと想像してしまいます。
その他、餃子を作る時に肉に塩糀を加えて練れば下味にもなるし、たんぱく質が分解されて少しの肉で粘りがでるのだとか。肉じゃがも出汁が染みた翌日の味になるそうですよ。なるほど、そう考えると先ほどのドレッシングなんかカルパッチョに美しくかけたら立派なおもてなしの一皿になりそう! 簡単でしかも糀パワーももらえるなんて、これは嬉しい限り。
さらに塩糀には三大消化酵素が含まれているため体で消化されやすく胃の負担が減るので、お年を召した方にもよさそう。
ぜひ、みなさんも塩麹を食生活に取り入れて、元気に秋冬を乗り切りましょう~!
■■INFORMATION■■
京都花糀
京都府向日市寺戸町西田中瀬3-2 優伽Ⅱ
TEL075-934-7477
営業 11:00〜19:00
休み 土・日・月曜日、不定休あり