【特集】桃の香りがする!めずらしいイチゴを使ったケーキとは?行列の絶えないイチゴスイーツ専門店に潜入
全国から取り寄せたこだわりのイチゴを使った、イチゴスイーツ専門店が京都・烏丸御池にあるのをご存知ですか? 毎日開店前から長い行列ができるというイチゴスイーツ専門店『メゾン・ド・フルージュ』。この店のオーナー・渡部美佳(わたべみか)さんは、イチゴの美味しさに惚れ込み、より多くの人に美味しさを伝えようと日々奮闘しています。今回はそんな渡部さんを密着しました。
イチゴにかけるたっぷりの愛情!一粒食べれば育った環境さえも…
渡部さんが作るスイーツはすべて「イチゴが主役」。その工程ひとつひとつにこだわりとイチゴへの愛情がたっぷり詰まっています。お店で扱うイチゴは、日本全国からやってきて、その都度味を確認した上で、どのスイーツに合わせるかを決めます。渡部さんによると、たとえ同じ品種のイチゴでも味に違いが生まれるといいます。「同じ品種のイチゴでも産地が違うし、作る人が違うので土も違うじゃないですか。どのタイミングで取るかでも異なるんです。なので、味が全然違うんです。」(渡部美佳さん)
今では、イチゴを一粒食べただけでそのイチゴが育った気温や日照時間までもがわかるのだそうです。そんなイチゴに惚れ込む渡部さんは、今回新たなスイーツ作りに挑戦しました。
試行錯誤…新作タルトづくりに挑戦!
2020年2月下旬、渡部さんの姿は岡山にありました。京都では日々の業務に追われているため、新作を考案する際には自社工房のある岡山・西粟倉に向かうのです。
この日は同年3月中旬から発売予定という新作タルトの試作を行います。イチゴの引き立て役に渡部さんが目を付けたのはライチ。味のアクセントにうまく使えないかと、試行錯誤の末、細かく刻んで生クリームに混ぜ込みました。
「うん!ライチ負けてない。ここにイチゴを乗せて、イチゴが負けへんかよね。」(渡部美佳さん)
あくまでもタルトの主役はイチゴ。ライチがイチゴの邪魔をしない割合を見つけるまで、ひたすら食べ続けます。肝心のイチゴも、どの品種を使うか決まらないままこの日は終了しました。道のりは長そうです…。なぜ渡部さんはここまでイチゴにこだわるのでしょうか。
人生を変えた一粒のイチゴとの出会い
元々アパレル会社で企画デザインの仕事をしていた渡部さん。友人から教えてもらった、あるイチゴが彼女の人生を変えました。「ある農家さんの”さちのか”というイチゴがすごく美味しくて、これは伝えなければという使命感がありました。」(渡部美佳さん)イチゴとの運命的な出会いを経て、2003年に友人とともにイチゴスイーツ専門店を開きました。
開業以来、渡部さんが大切にしているのはイチゴ農家さんとの信頼関係です。全国の農園に直接足を運び、イチゴがどのように育ち、どれくらい愛情を込められているかを知ります。その上でイチゴの良さを際立たせるスイーツを作ることが彼女のモットーです。
どうしても会いたい!桃のようなイチゴで作る新作タルト
新たなイチゴの農家との出会いを求め、関西を抜け出し茨城県を訪れた渡部さん。“どうしても会いたいイチゴ”があるという彼女が向かったのは、つくば市にある「むつみ農園」です。そこで育てられているのが、淡いピンク色のイチゴ「桃薫(とうくん)」です。その名の通り桃のような甘い香りが特徴で、熟すと実がとろけるような優しい味わいになるのだそうです。
桃薫は3月に収穫量が多くなるとむつみ農園・酒井さんは言います。
「桃薫は暖かくなる時期にかけて、普通の赤イチゴと比べると3倍の量になります。」(むつみ農園・酒井成人さん)酒井さんのイチゴに対する情熱やこだわりを聞き、どんなスイーツにして届けようか思いを巡らせる渡部さん。
「酒井さんは『美味しいときに食べてほしい』という思いが強い方です。私が関西ではなかなか食べることのできないこのイチゴの美味しさをお伝え出来るように、このイチゴにあったお菓子を作ろうと思います。」(渡部美佳さん)
桃の香りにすっかり惚れ込んだ渡部さんは、新作のタルトには桃薫を使うことに決めました。
むつみ農園を訪れた翌週、京都のお店に桃薫がやってきました。新作のタルト生地とライチ入りのクリームに桃薫は合うのでしょうか?ドキドキしながら試食を行います。果たしてその相性は…。「あかーん、全然。どっかに行った」(渡部美佳さん)
ライチの味が強く、桃薫の香りは、かき消されてしまいました。次は何もつけずにタルト生地と桃薫のみで試食するものの、桃薫の香りが想像以上に繊細で生地に合わせるとすぐに桃薫が消えてしまいます。
何としても桃薫を新作タルトに使いたいと考えた渡部さんは、急遽タルト生地の配合から変更することに。生クリームに混ぜ込んでいたこだわりのライチもなくし、桃薫の味が一番前にでるよう方針を大転換しました。いかにイチゴそのものの魅力を引き出せるかがカギになります。試行錯誤の末、行き着いた先は“シンプルイズベスト”。優しい生地に甘さ控えめの生クリームを添え、イチゴの香りを最大限に生かした、まさに桃薫のためのタルトが完成しました!
3月14日、ついに「桃薫のタルト」の発売日がやってきました。珍しい” 桃の香り”がする「桃薫のタルト」に誘われ、次々と注文が入ります。「桃の薫りというのに惹かれて注文しました。ちょっと甘酸っぱくてケーキの甘さにちょうど合っていて美味しい」(桃薫のタルトを注文した女性)「桃薫のタルト」は、オープンからわずか3時間で完売しました。
※「桃薫のタルト」期間限定商品です。
彼女にとって人生をも変えたイチゴとは、どのような存在なのでしょうか。「私にとってイチゴは本当に奥深く、ワクワクの対象です。」(渡部美佳さん)
イチゴが与えてくれる喜びや発見をもっと多くの人と共有したいという渡部さん。イチゴへの恋はまだまだ止まりません。
読売テレビ「かんさい情報ネット ten.」より