【CMで話題】美山かやぶきの里、女性茅葺き職人を直撃してしてみた!
魔法瓶サーモスのCMでご覧になられた方も多いかもしれませんが、あの新人茅葺き職人の女性、実は京都・美山町にある美山茅葺株式会社の従業員の方なんです!フォトジェニックな観光地の風景って、確かに誰かが景観保全しているんですよね~。
今回は女性茅葺職人・岡祐紀さんとその親方(社長)の中野誠さんのお二人に、CMの裏話、若手茅葺職人の育て方、茅葺の魅力、美山のこれからなどなど、たっぷりとお話を聞いてきました。田舎暮らしを憧れで終わらせたくない方、最後まで必読です!!
サーモスブランド TVCM “かやぶき篇” 30秒 THERMOS Brand TVCM
京都屈指の観光地!「日本の原風景」が残る美山町
まずは美しい茅葺屋根の風景をご覧あれ!「美山かやぶきの里」
京都府内には「国の重要伝統的建造物群保存地区」(以後略称で「伝建地区」と表記)が7地区あり、その一つが南丹市美山町北村にある「美山かやぶきの里」。39棟の茅葺屋根の家が立ち並ぶ集落で、平成5年に選定されました。
春と秋の年2回、放水銃の一斉放水で火災の訓練が行われます。茅葺屋根と美しい水のアーチの競演をお目当てに、静かな里山の集落が大勢の見物客で賑わっていますよ。
知らなかった茅葺のあれこれ
早速CMに出演されている茅葺職人の岡さんに会社の倉庫や、茅葺屋根の葺き替え現場を案内してもらいました。茅について知ることで美山に足を運んでみたくなること間違いなし!
茅っていう植物は存在しない!?
-岡さんは今、茅葺の民家に住んでいるそうですね。茅葺屋根の住宅のいいところってどんなとこ?
茅葺の家って、究極のエコ住宅なんですよ。茅が調湿、断熱、遮音してくれて、すっごい快眠です!電磁波を吸収してくれるような(笑)
-初歩的な質問なんですが、そもそも茅って?
茅(かや)は、屋根を葺く植物の総称で、「茅」っていう名前の植物は存在しないんです。ススキやヨシ、イナワラなどのことをいいます。
-美山の美しい茅葺はどんな材料なんですか?
美山は里山なんでススキですね、材料も土着性があるんですよ。琵琶湖など水辺の近くの地域だとヨシを使っていると思います。
-美山のススキ?
いいえ。ススキには熊本・阿蘇山と静岡・御殿場の二大産地があるんですよ。こちら(写真)の茅は熊本から仕入れています。
11月から3月までがススキの収穫時期なので、時期によって穂付きだったり、シュッと大きくて太いものだったり。部分によって使い分けて屋根を調整します。倉庫いっぱいにしても2年で使い切っちゃいますね。
-だいたい1軒の屋根を葺くのにどれくらい使う?
まるまるだと屋根4面で約250平米なんで、3000~3500束必要ですね。10トントラックだと5.6台分ですね。
美山は屋根を1面ずつ計画的に葺き替えている
-どのくらいのスパンで屋根の葺き替え作業を?
だいたい15年に1回ですね。でも、屋根全部を一気に吹き替えるのではなく、屋根1面ずつ葺き替えるのが美山のスタンダードなんですよ。工期は2週間くらいです。一気に屋根の吹替えの時期がやってきてしまうと材料も人手も足りなくなってしまいますから・・・。
南丹市と連携して屋根の葺き替えのサイクル表を作成、全4面ある屋根を順番に1面ずつ、傷み具合に応じて葺き替えていきます。もちろん施主さんのご意見も聞きつつ、まずはお見積もりから。来年、再来年までの工事の計画を相談します。
-全部まるっと葺き替えっていうパターンはない?
一昨年(2017年)にトタン屋根から茅葺屋根に全部葺き替えた納屋があります。伝建地区に選定される前まで、年配の方の茅葺屋根のイメージがあまりいいものではありませんでした。
施主さんの思い次第で、茅葺、トタン、瓦の屋根のいずれかを選んでおられますよ。建築基準法によって、京都では美山町と隣町の日吉町は特区なので、茅葺の新築もできます。
-ちなみに、地元の美山以外でもお仕事ありますか?
はい、弊社は美山チーム、出張チーム、京都市内チームと3つにわかれて動いています。雪が降ると作業できないから、冬場は雪の降らないエリアにお仕事いってますよ。だいたい、九州、沖縄から近畿といった西日本が中心ですかね。
【インタビュー】CMの裏話、美山と茅葺職人のこれから
実は迷ったCMのオファー、その理由とは?
-新人茅葺き職人としてCMに出演されていましたね、ご本人に会えて嬉しい♥周りの反響は?
岡 はい、もちろんすごく反響ありました。今、入社して3年目なんですが、CMのオファーが来たときはまだ入社して1ヶ月・・・。撮影したのが入社してから5ヶ月半くらいのころでしょうか。
そもそも、わたしは一人前の茅葺職人になりたいから入社したわけではなく・・・、皆さんの思う職人像と違うので、オファーを受けるかどうかすごく迷いました。
-違うっていうのは、具体的にどういうことですか?
岡 わたしは現場の職人と施工管理をつなぐ人になりたい!と思って入社したんです。そもそも実家が設計事務所で父親が一級建築士だったことから、父のような建築士になりたくて、大学では建築を学んでいました。設計をする人の目線から職人さんのサポートができればと思っています。
中野 女性の茅葺職人をCMに起用したいということにも驚きましたが、いわいるイマドキの女子大生の岡が茅葺職人の勉強がしたい!と入社してきたことにはもっと驚きました。娘にも、「パパ、スゴイ」って褒められました。(笑)
夢を持った若者たち、目指すは田舎!の時代になった
-やっぱり、職人といえば一般的に男性の仕事というイメージですもんね。
中野 僕が脱サラした23歳の時、自分探しの旅をしました。イギリスでたまたま出会った茅葺屋根の村では、女性の職人もいましたから違和感はなく・・・男性も女性もないなーって思ったんです。
その時、ヨーロッパに茅葺屋根があったこと、茅葺職人は若者の憧れの職業だったことを知り、とても驚いたねー。心打たれました。
さらに僕の地元・美山の茅葺屋根の風景の写真を見せると、「君はこんなに素晴らしい村に住んでいるのか!」と大絶賛されたんですよね。これがきかっけで、僕が家族の反対を押し切り茅葺職人になるわけなんですが・・・。(笑)
※家族の反対などのエピソードはHPに掲載されている寄稿をご参照ください
-外へ出て初めて自分の故郷の価値に気づいたわけですね。そして本当にやるべき仕事に出会ったと。
中野 あれから約25年・・・。普通なら東京に行くような夢を持った若者が、田舎へ好んで行くようになった、風が変わってきたねー。
今、弊社はスタッフ10名で、平均年齢31、32歳くらいなんですが、岡をはじめ多くの若者が弊社の門をたたいてくれたから、絶対、美山は変わるな!!と確信しました。
僕がやりたいと思ったことに世の中がようやく追いついてきたと実感しています。こういったCMの起用にも現れているのかと。
-全国的に茅葺職人ってどれくらいいるんですか?
中野 だいたい150人くらい、とくに近畿にかたまってるかな。
-岡さん、親方とはどんなご縁で?
岡 大学4年のときに同じゼミの友達が、「茅葺屋根の茅を刈り取るワークショップが美山であるから一緒に行こう!」って誘ってくれて。たまたま親方(社長)とお話する機会がありました。
岡 茅葺職人の話を聞いてビビッときたのと、わたしのバイブルでもあるスタジオジブリの映画作品「おもひでぽろぽろ」の世界観とも重なって、一気に心が引き込まれました。その後、実際に現場でアルバイトをさせてもらって。そのときに、茅葺が金色に輝く姿に感動し、魅了されて。こんなに素晴らしいものを作れる会社で働いてみたいと思ったんです。
時代にあった職人の育て方
-岡さんにとってCMは入社1ヶ月の出来事だったけど、親方にとっては約25年頑張ってきた成果でもありますよね。新人に出演のチャンスをあげる、新人ファーストないい会社~。社長であり親方である中野さんが若者たちをどのように育成しているのか気になります。
中野 職人と言えば口伝&徒弟制度、僕の時代は見て覚えろ!が当たり前でした。でも、今の子たちに「見てやってみろ」では絶対に無理!!
手取り足取り、時には模型を使って座学をしたりと、学校のようにやらないと育たないんですよね。夏休みをとって海外研修にも連れていったりと。反面、貪欲さがなくなってしまわないか・・・ということも心配してますけどね。
-茅葺職人ってどれくらいで一人前になれますか?
だいたい5.6年ってとこかな。それくらいでみんな独立して、ここを巣立ちます。弟子を育てるって大変だけど、必ず次の世代で良いことがかえってくると信じてるから。
美山のこれから、僕の夢は世界遺産登録!!
-親方が今後目指していることってあるんですか?
中野 美山を世界遺産にすることです(笑)。元気いっぱいの30、40代が社長になって美山を引っ張っていってほしいね~。
-すごい夢!具体的にどれぐらいの人手があれば世界遺産になれそうですか?(笑)
中野 そのためにはあと100人くらいの人手がいるかも。100人来たらその家族もついてきてくれるとすると、美山はものすごく活気がでるやろね~。
一歩先の京都、そして美山のことを真剣に考えると景観保全に加えて、環境保全、美味しい農産物を作ったり、快適な滞在施設を運営したり・・・などトータルでコーディネートできるような組織にしていく必要があります。
中野 岡は、田舎の暮らし方についてとても興味をもってくれているので、そういった面でもアドバイスをできるような存在になれると思っています。トータルでコーディネートというとかっこよく聞こえるかもしれませんが、1人でいろんなことをやらないと生きていけてないんですよね~、なにせ限界集落なもんで(苦笑)。
岡 わたしが美山に住んでいるもうひとつの理由が、田舎暮らしへの強い憧れがあったんです。農家のお嫁さんになることも夢の一つでしたから(照)。
親方の原動力とは?
インタビューの最後、今までもこれからもチャレンジし続ける親方に原動力の源は何でしょう?と訪ねたところ、「先人から預かった遺産を引き継ぐ、責任感しかない」と力強い言葉をいただきました。
親方や岡さんの希望に満ちた明るい表情を見て、ライターとして目の前のお仕事「執筆を通じた町おこし」をもっともっと頑張ろうと思いました~。
世界遺産に登録されるその日まで応援しておりますよ~。そして、美山茅葺株式会社でお仕事したい方は親方までご連絡お願いいたします~!!
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美山茅葺株式会社
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さかもとみえ
あ~本当に素敵な師弟関係でうらやましい~。わたしも師匠がほしいと思った日でした。そして、茅葺のゲストハウスがOPENしたら是非とも美山に泊まりに行ってみたいと思います!茅葺屋根の家で寝るとどんな感じで気持ちいいのか試してみたい~。今から待ち遠しくてたまりません~!!