【京都の学校給食】給食甲子園準優勝の宇治田原町 が誇るおいしい給食って?
京都府の学校給食シリーズ・伊根町、長岡京市に続き、第3弾は、お茶の名産地・宇治田原(うじたわら)町。地元の方から美味しいと評判の給食は、『全国学校給食甲子園』(以下、給食甲子園)で準優勝を果たすほど。一体どんな給食なのでしょう!? 今年で創立150周年を迎えた、歴史ある宇治田原町立田原小学校を取材してきました。
また、記事の最後では、文化庁から「100年フード」の認定を受けた宇治田原町の郷土食「茶汁」を味わえるスポットもご紹介!
田原小学校のある「宇治田原町」はどんな町?
田原小学校(写真)のある宇治田原町は、京都府の南東部に位置し、日本を代表するお茶処のひとつ。日本緑茶発祥の地としても知られています。
古くからお茶の栽培に適した豊かな自然に恵まれ、山あいには、美しい茶畑が広がっています。地図で宇治田原町の形をみてみると、なんとハートの形をしているんです!
また、町のシンボルの一つが、ハート型の窓がキュートな「正寿院」。実はこの形、猪の目の形に似ていることから猪目と呼ばれている日本古来の伝統文様なのです。
このあと、ハート型のとあるものが、給食にも登場します~。
給食甲子園準優勝に輝いた美味しい給食って!?
まずは、栄養教諭の山下先生にお話を伺いました。宇治田原町が教育において大切にしていること。その一つが、「誇りをもってふるさとを語れる人材を育成すること」です。そのために、「記憶に残る給食」作りに力を入れています。
「社会へと巣立っていく子どもたちが、『この日にこれを食べたな~、もう一度あのメニュー食べたいな~』と、日々の生活の中で給食をきっかけにふるさとを思い出してくれたらいいな、との思いから特別な献立メニューが出る日を作っています」と山下先生。
「また、京都ならではの和食の良さを、子どもたちが一番身近な給食を通して、継承していきたいと思っています。特にお出汁の美味しさにはこだわっていますね」と続けます。
「うじたわらの日」給食の誕生から準優勝までの物語
宇治田原町の給食は、宇治田原町立学校給食共同調理場という町直営の給食センターで調理されます。毎日、約10名の調理スタッフが、町内の幼稚園・小中学校の子どもたち、教職員あわせて約700食の給食を調理し、各学校・園へ運びます。時間が経っても揚げ物はサクサク食感!!美味しく食べられるよう、子どもたちのために研究を重ねてきました。
もともと宇治田原町は、田原村と宇治田原村という2つの村でしたが、1956(昭和31)年に合併。2016(平成28)年に町制施行60周年を記念し考案されたのが「うじたわらの日」給食メニューでした。給食センターのスタッフに加えて、食生活改善推進員など地域の方々もメニュー開発のお手伝いをしてくださったそうです。
できあがった献立は、水出しした緑茶で炊いた「茶の香ごはん」とその茶殻で作る「茶の葉ふりかけ」。郷土食の茶汁(※茶汁の詳細は記事の最後をチェック)。代表的な地場産品「古老柿(ころがき)」を使用した「鶏肉の古老柿だれ」。宇治田原野菜の柿栖和え、柿、牛乳。
郷土料理や地場産品をふんだんに盛り込んだ、これぞ“ふるさとの味”です。
普段から、子どものために「安心・安全で美味しい給食を作ろう!」と一丸となり、徹底した衛生管理や、妥協のない味付けにこだわり続けてきた給食センターのスタッフの皆さん。毎日の終礼では、振り返りを欠かしません。
地場産品を活かした美味しい学校給食コンテスト「給食甲子園」に出場したきっかけを山下先生に聞きました。
「当時の栄養教諭が、『新しい献立(「うじたわらの日」給食)ができたので、せっかくなら力試しにみんなで大会にチャレンジしてみないか』と、給食センターのスタッフに声掛けしたことがきっかけで、宇治田原町チームが結成されました」
大会は、制限時間内に調理から後片付けまでを行い、手洗いなどの衛生管理の点も審査の対象になります。安心安全で美味しい給食には自信があった宇治田原町チーム。一番苦労した点は、調理場の環境や設備、給食を作る量も、普段の給食と全く違うということ。大会までの期間は、業務終了後に学校の家庭科室を借りて、調理手順や動作のシミュレーションを重ねる毎日を過ごしていたそう。
全国から2000校(施設)以上もの応募があった第11回大会(2016年)。第1次から第4次選考まで突破した12校(施設)だけが決勝大会に進めます。なんと、見事にその狭き門を突破し、京都府代表としても初の決勝大会に進出。審査の結果、栄えある準優勝を獲得。自信が確信に変わった瞬間でした。
給食甲子園を機に、宇治田原町の給食が全国に知れ渡り、メディアからの取材や視察依頼も殺到しました。
「子どもたちはもちろんのこと、学校給食が地域のみんなの誇りとなりましたね。その頃の子どもたちは卒業してしまいましたが、今も、食への興味や関心がとても高い子どもたちばかりで、伝統がしっかりと根付いていると感じます」(山下先生)
「うじたわらの日」給食を実食!宇治田原町の珍しい食材に舌鼓み
いよいよ実食!この日の内容は、碾茶(てんちゃ)ごはん、鶏の古老柿だれ、宇治田原野菜の柿酢和え、すまし汁、牛乳。
茶の香ごはんは、抹茶の原料となる茶葉・碾茶を使用。さわやかなお茶の香りと味わいが心地よいお味。
鶏の古老柿だれは、宇治田原町を代表する地場産品の一つ「古老柿」をペーストにして作ったタレを、焼いた鶏肉に絡めたもの。やさしくて深みのある甘辛ソースはごはんがすすみます。当日の献立の中で、生徒さん一番のおすすめでした。
宇治田原野菜の柿酢和え、すまし汁は、地元の野菜がたっぷりと入った和え物と汁物。なかでもしいたけは絶品!
秋から春には、宇治田原町産の原木しいたけが旬を迎えます。年月をかけて育った原木しいたけは、芳醇な香りと、肉厚で歯ごたえもよく、しいたけが苦手な子どもでも、これなら大丈夫かと!
古老柿で醸造した柿酢は、酸味がまろやかで、深みのある味に。酢の物が苦手な子どもでも食べやすいお味でした。
すまし汁の中に、たまたまハート型の人参を発見!!山下先生によると、「700食のうち、数十名にしか入らない、希少なハート型の人参。ハッピーな気分になれる仕掛けです」とのこと。まさかこのタイミングで出合えるとは・・・驚きました。
年3回の「うじたわらの日」以外に、特別な献立メニューが出る日は、月1回お茶尽くしの「茶ッピーランチ♪」、宇治田原町の偉人、茶祖・永谷宗円の命日には「お茶漬け給食」、子どもたちがリクエストしたメニューが並ぶ「進級・進学お祝い給食」などなど。
児童のみなさんへの直撃インタビュー。食への関心が高い明るい子どもたち
6年生の教室にお邪魔して数名の児童のみなさんにお話を聞いてみました。
お茶の給食メニューで何が好き?と、たずねてみたところ、茶団子、ほうじちゃクッキー、抹茶揚げパン、茶の葉のかき揚げ!という答えが。
関東から移住してきたある児童は、「宇治田原町へ来て生まれて初めてお茶の葉っぱを食べた。お茶は飲むものだと思っていたけど、食べられると知った時、とても驚いた。宇治田原町の給食はいろいろな味付けがあって美味しい」と教えてくれました。
また、「おやつの時間や夜ごはんのあとは、急須で入れたお茶を家族で囲む」という声や、お気に入りの抹茶ソフトクリームのお店の情報を教えてもらったり、教室の窓からおばあちゃんの茶畑を紹介してもらったり・・・と、茶処ならではのコメントも。
そのほか、給食の自慢ポイントは?と聞くと、「お茶の味がほどよく感じられる味付けが好き」「お皿の中でおかずが少々混ざっても美味しい」「毎日いろいろなメニューが出てくるからうれしい」「お茶メニューはお茶本来の美味しさを味わえるところが好き」と教えてくれました。
校内を移動していると、茶処ならではのあれ!を見つけました。
水道の蛇口からほうじ茶!!水筒のお茶がなくなったら、お茶の補充をしにやってくるとのこと。コップに一杯、お茶をいただきましたが、香ばしくておいしい♪
茶摘みや永谷園の食育出前授業、茶道クラブなど宇治田原町ならではの教育が充実!
給食以外にも地元に根付いたさまざまな取り組みがなされています。 校長の細矢先生にお話を伺いました。
「宇治田原町へ赴任して6年になりますが、みなさんとっても温かく、地域みんなで子どもたちを育てる、という意識が高いと感じます。子どもたちが地域の活動に参加したり地域の方々に学校に来たりしていただく機会をこれからも多く作っていきたいですね。そのことをとおして、子どもたちが地域の皆さんの考えや力を入れておられることを理解し、ふるさと宇治田原町を誇りに思う気持ちを育んでほしいと考えています」
そのために、具体的にはどのような取り組みをしているのでしょうか。
茶摘みや製茶体験、茶香服(ちゃかぶき)体験
毎年5月。新茶の時期に、地域の方にお借りしている茶園で、3・4年生が茶摘み体験を行い、摘んだ新茶は、次の時間に4年生が製茶体験をして試飲まで行います。町役場やボランティア団体とも連携し、児童はお借りした茜たすきと、姉さんかぶりなどの茶摘み衣装を身に着け、茶摘みの雰囲気を一層盛り上げます。
5年生になると、茶香服体験も。茶香服とは、鎌倉時代から続く、茶種茶銘を飲み当てる遊びです。全問正解者は、参加者45名のうち、子どもと大人をあわせてもなんと4名!難しいながらも、みんなで和気あいあいと盛り上がってお茶の伝統文化を学ぶことができます。
宇治田原町がルーツ!永谷園の出前授業も
現在日本で飲まれている緑茶の製法を発明したのが、宇治田原町の偉人・永谷宗円。町内には、永谷宗円の生家を復元した建物も。宗円さんの命日にあたる5月17日は、「お茶漬けの日」として、宇治田原町の煎茶を使ったお茶漬けが、5・6年生の給食に登場。
また、宇治田原町は食品メーカー・永谷園のルーツであることから、永谷園による食育の出前授業が行われます。永谷宗円と永谷園との関係、朝ごはんの大切さの話や、お茶漬けクイズまで、笑いと驚きに包まれるユニークな授業内容です。
クラブ活動で大人気!茶道クラブ
4年から6年で実施するクラブ活動。バトミントンやサッカーなど人気スポーツと肩を並べるのが、茶道クラブ!校区内に在住の茶道の先生の指導のもと、お茶を点てていただきます。時には、先生の自宅の茶室で、本格的な茶道具を使ってお点前を体験する機会もあるそうですよ。
文化庁から「100年フード」の認定も!ご当地グルメ「茶汁(ちゃじる)」
茶汁とは、茶農家がお昼ご飯として食べていた即席味噌汁のこと。こちらは、文化庁から「100年フード」の認定を受けている、宇治田原町の郷土食なんです。
茶汁がいただけるのは、日本緑茶発祥の地、湯屋谷地区にある観光・交流の拠点「宗円交遊庵やんたん」。ちなみに「やんたん」とは、湯屋谷の愛称のこと。
施設内の「あばんずキッチン」では、宇治茶やお茶スイーツ、地元食材を使ったランチのほか、「茶汁」(11:00~14:00)を提供しています。
茶汁におばんざいが付いた「彩りの茶汁セット」(1000円)。抹茶椀で茶汁を提供するスタイルは同店のオリジナルです。仕上げに、香ばしい番茶をたっぷりと注いだら出来上がり。
茶汁の具材は、春夏・秋冬で内容が変わります。写真は春夏バージョン。焼きナス、素麺、ハート型のニンジン、水菜、冬瓜、そして大豆栽培から手掛ける自家製味噌。秋冬になると、焼きナスが原木しいたけに、素麺がお餅に、冬瓜が大根に。
味噌と番茶の相性がとっても良く、美味しい!あっさりとやさしい上品な味わいでした。
テーブル席のほか、施設内奥にはこのような床の間付のお座敷もあるので、和の空間で癒しのひとときを過ごすこともできます。
今回は、お茶の名産地・宇治田原町で大評判の学校給食をいただきました。「美味しい給食があるから、学校が楽しい!行きたい!!」というモチベーションを子どもたちから感じました。宇治田原町のお茶グルメを食べてみたい!という方は、ぜひ、「宗円交遊庵やんたん」へお越しください。
✼宇治田原町の給食レシピ集
https://www.town.ujitawara.kyoto.jp/soshiki/gakkokyoikuka/kyoiku/1/723.html
■■INFORMATION■■
宗円交遊庵やんたん
TEL:0774-46-8864
住所:京都府綴喜郡宇治田原町湯屋谷尾華21
営業時間:10:00~16:00(11月~2月)/10:00~17:00(3月~10月)
定休日:水曜・木曜・年末年始
アクセス:京滋バイパス「南郷」インターより車で約20分
駐車場:あり
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