TOP ライフスタイル 【和歌山】新たな可能性にもチャレンジ!“女性初”の伝統工芸士を目指す職人

【和歌山】新たな可能性にもチャレンジ!“女性初”の伝統工芸士を目指す職人

2021.12.31

関西の輝く女性にスポットライトを当て紹介するwebマガジン『anna(アンナ)』の連載企画『あんな、ひと』。第5回目の『あんな、ひと』は和歌山県紀の川市で発見! 自然に恵まれ、木の香りに包まれた工場で出迎えてくれたのは、濱口 凜(はまぐち りん)さん。

今回は、女性初の“紀州箪笥 伝統工芸士”を目指す桐箪笥(きりたんす)職人が夢見る未来と今の想いについて聞いてみました。

■現代の名工が目指す桐製品の無限の可能性

画像:anna

今回の『あんな、ひと』の濱口さんが働く『家具のあづま』は、120年以上続く桐箪笥の製造販売会社です。師匠でもある5代目社長の東 福太郎さんは桐箪笥作りだけでなく、漆工芸や文化財保存技術などの伝統工芸技術も継承。宮大工として神社の本殿の建築にも関わるベテラン職人です。

画像:anna

工場の隣にあるショールームでは、桐の家具以外に、桐製のカッティングボードやロックグラスなど、おしゃれな雑貨も販売。桐製品の新たな可能性にチャレンジしています。

■モノづくりが好きだったことから、進んだ伝統工芸の世界

画像:anna

高知県で生まれ育ち、中学・高校は岡山県で過ごしてきた濱口さん。幼い頃の自分について「絵を描くことは得意ではありませんでしたが、粘土があれば一日中遊んでいられる子でした」と話します。

中学校の美術で習った“寄木細工”に魅了され、大学は京都美術工芸大学の伝統工芸学科木工コース(現:美術工芸学科工芸コース木工・彫刻)へ進学。木材の調達、製材、デザイン、組立て、漆仕上げまで幅広く学びましたが、そのなかでも夢中になったのが、“家具作り”でした。

画像:anna

特に、釘などを使わず手作業で作った凸凹を組み合わせてパーツを接合する“組み手”の技術に惹かれたそう。「過去の職人たちが生み出した精微な技巧の数々は、知れば知るほど奥深いんです」と語ってくれました。

画像:濱口 凜

卒業制作には、漆塗りの飾り棚を製作。さらなる技術向上を求めて、卒業後も伝統的な家具作りの道を志したところ、指導教員の友人であり、姉妹校の先輩である東さんを紹介されました。

伝統工芸の世界では工程ごとの分業が多いですが『家具のあづま』では山に入って木を選ぶところから、漆などによる仕上げまで、社内で一貫して行っています。すべての技を学べて腕を磨ける環境や、家具の塗装職人である東社長の奥さんをはじめ、女性職人が多く在籍していることも『家具のあづま』に入りたいと思う決め手のひとつでした。

■成長を実感できる、研鑽の日々

『家具のあづま』に入社したのは2019年4月。それまで桐箪笥を制作したことはなく、塗装前に木材を整える“サンディング”から始まり、徐々に技術を学んでいきました。

画像:anna

今では工場にある機械のほとんどを扱えるようになったそうで、「この間、やっと新品箪笥の制作をイチから任せてもらいました」と嬉しそうに制作途中の箪笥を見せてくれました。

画像:anna

「箪笥職人には体力も必要なので、最近はじめたんです」と語るように、毎日6時半に起きる濱口さんの朝は、ジョギングからスタート。自宅に戻ってお弁当を作り、8時半には家を出ます。

出勤後は、黙々と桐箪笥を作ります。さまざまな機械や工具を駆使して作業を進めるなか、ふとした瞬間に思い出すのは、すべて手作業で行っていた過去の箪笥製法のこと。実際に作業していくなかで、過去の職人たちの緻密で高い技術力に想いを馳せ、作業をする手にも力が入ります。

画像:anna

「後輩が入社したので、個人の作業だけでなくアドバイスをすることも多くなりました」と濱口さん。ランチタイムでは、同僚や後輩たちと週末の予定や趣味の話といった雑談をして気持ちをリフレッシュ。午後からも集中して作業をこなします。

画像:anna

18時の終業前には、社長の東さんと翌日の仕事内容の相談やこれからの作業方針についてやりとりを交わし、その日の作業は終了です。そして、自転車で帰宅。

自宅に帰ってからは、大好きなロックバンド・SUPER BEAVERをBGMに夕食作り。テレビやインターネットを楽しんでいるとあっという間に時間が過ぎ、濱口さんの一日は幕を閉じます。

「休日は、大好きな音楽を聴いて自宅でゆっくりしているか、同年代の職人さんと和歌山市内のカフェに出かけたり、ショッピングを楽しんでいます。少し前から休日も工場で作業していいと許可をいただけたので、個人的な作品作りに励むことも多くなりました」と濱口さん。

画像:濱口 凜

先日は実家のお母さんに頼まれ、1か月かけて愛猫のキャットハウスを製作したんだそう。卒業制作で余った欅(ケヤキ)を使った贅沢なキャットハウスは、実家で飼っている7匹のネコたちもすごく喜んでくれているんだとか。

画像:anna

ネコが大好きな濱口さんは「動物が好きなので、このキャットハウスのように木を使った動物のためのグッズなどを作っていきたいと思っています」と将来の目標も教えてくれました。

■社長も認める努力と技術力

画像:anna

「普通の職人が5、6年かかるところを半分くらいで習得している」と濱口さんの技術がグッと上がっていることを認めるのは、社長の東さん。

「このまま経験値を上げていけば、伝統工芸士も夢ではない。絶対いいとこまでいくと思うから、今後はコンテストなどに積極的に出品していって欲しい」と、濱口さんの仕事に取り組む姿勢に太鼓判を押します。

画像:anna

濱口さんいわく、「直近の目標は、作品が経済産業大臣指定の伝統工芸品に認定される“紀州箪笥 伝統工芸士”の資格を獲得すること」だそうです。現役で“紀州箪笥 伝統工芸士”として活躍している方は数名ほど。濱口さんが“紀州箪笥 伝統工芸士”の資格を獲得すれば、女性初の快挙となります。

“伝統工芸士”になるには、筆記、実技、面接などの試験もありますが、まずはあと5年の実務経験が必要です。

師匠の言葉を借りれば「めちゃめちゃ向上心があるし、技術力もある」という濱口さん。これからさらに輝きを増すであろう濱口さんの活躍に今後も目が離せません!

■「家具のあづま」のおすすめ商品!

ショールームでは桐箪笥も販売していますが、今回はオンラインでも購入可能な桐を使ったおすすめ雑貨や小物を教えていただきました。

画像:anna

『桐のロックグラス(柿渋オレンジ・ナチュラル)』(各11,000円・税込)。

口当たりを良くするためにカップの淵を厚さ1mmまでに研磨。保温性・保冷性にも優れ、手になじむ感覚と桐の温もりが感じられます。カップが傾いても起き上がる“起き上がりこぼし”を採用。

画像:anna

『桐カッティングボード(大)』(8,250円・税込)。

天然の柿渋を使用した塗装に食品衛生法に基づくコーティングを行った桐カッティングボード。撥水効果が高く、お肉や、お魚を切った後も簡単に洗浄できます。小(6,050円・税込)と四角(6,600円・税込)もあります。

画像:anna

『桐のビア杯 鳳凰』(22,000円・税込)。

一本の桐から無垢材を匠の手で約1mm に削りあげた桐のビア杯。口当たりが非常によく軽量なのが特徴で、ギフトとしても人気のアイテムです。専用の収納箱の蓋も桐材で作られ、おつまみを置くプレートとして利用可能。

<店舗情報>
有限会社 家具のあづま ショールーム
住所:和歌山県紀の川市名手市場1169-1
電話番号:0736-75-3600
営業時間:9:00~18:00
定休日:日曜・祝日

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『あんな、ひと』では、次回も関西で活躍する女性にスポットライトを当て紹介します。お楽しみに!(取材・文/高田強、撮影/井原完祐)

【画像】
※ anna/濱口 凜



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